あなたの周りにも、寡黙な人っていますよね。
積極的に会話に加わるでもなく、かといって退屈しているわけでもなく、
仲間たちが語らうのを遠くから眺めているような人。
決して自分から多くを語らず、一見とっつきにくそうにも見えるけれど、
話してみると意外と物腰が柔らかく、
穏やかな語り口の端々に深い情熱を秘めた人。
静かな佇まいと、たまに見せる笑顔と、含蓄のある会話につい惹かれ、
また会ってみたいと思わせるような人。
そんな寡黙な人のようなケーキが、いちじくの焼きこみタルト です。
見た目は素朴で、きらびやかさには欠けるかもしれません。
でも、風味豊かな生地と一緒に焼いたいちじくは、フレッシュな時よりもしっかり存在感を主張します。
ねっとり包み込むような甘さに後ろ髪を引かれ、
食べ終わるころには、もうちょっとお近づきになりたかったな、と思うかもしれません。
そういえば、いちじくは「無花果」と書きます。
花をつけない果実、というところも、寡黙な人のイメージそのもの。
物言わぬ寡黙ないちじくの素顔を、知っているのはあなただけです。